弁護士法人 Si-Law

西田ブログ

理念浸透

理念経営とはどんな経営なのでしょうか?

理念が社員に浸透しているとはどういう状態なのでしょうか?

 

何のために,誰のために,何故経営するのか

 

ここを考え抜いたところの答えが理念に当たると思うのです。

すなわち,理念経営とは,目的先行の経営と言えるでしょう。

その企業が何のために,誰のために,何故経営をするのかという目的と,その根底にある在り方としての価値観を示したものが理念であり,その目的に企業全体を向かわせるのが理念経営だと思います。

 

どんなに素晴らしい理念を掲げても利益が出なければ意味がない。

そのとおりだと思います。

利益は企業の血液であり目的を遂げるための必須条件です。

力なき愛は無意味と言うほかありません。

しかし,理念経営をしているのに利益が出ないというのは,理念が単なる言葉になっている可能性があります。

理念とは単なる言葉ではありません。

単なる言葉を朝礼で読み上げても理念浸透はしないのです。

理念は実行すべきものであり現実化すべき目的です。

理念が浸透するためには経営者が社員に語ることが必須となります。

言葉に命を吹き込む行動が必要なのです。

また,理念は経営者や幹部がモデルとなる行動で示す必要があります。

なぜなら,理念は理屈で理解するのではなく体得すべきものだからです。

そして,モデルとなる行動を評価・承認する仕組みを作らなければなりません。

人事評価や表彰制度などの仕組みを構築する必要があります。

こうして理念は社員の行動となって現れるようになるのです。

 

経営者が目先の利益や企業の売却益のみを目標として経営した場合,社員を動かす原動力は経済的報酬のみとなり,やり甲斐などの精神的報酬は与えにくいのではないでしょうか。

社会性のある理念に共感できるかけがえのない同志と共に目的に向かって走り続ける。

そんな組織を作るのが経営者の使命だと思うのです。

 

強く願う

松下幸之助は、経営にも資金や設備あるいは在庫といった様々な面にダムがあれば余裕のある経営ができるという「ダム経営」を唱えました。

ある講演会に招かれたとき、ある経営者が松下幸之助にこう質問をしました。「松下さんの言うように余裕があればそれにこしたことはないが、その余裕がないから困っているのだ。どうしたら余裕ができるのか教えていただきたい。」

松下幸之助は答えました。「簡単には答えられませんが、やはり、まずダム経営をやろうと思うことでしょうな。」この答えに聴衆からは拍子抜けした笑いすらもれました。

 

しかし、その講演会に出席していた稲盛和夫は、感動と衝撃を受けたそうです。

当時の京セラは、創業後間もなく、稲盛和夫は経営に大きな悩みを抱えていたところでした。

稲盛和夫の人生は決して順風満帆ではありません。「自分は実は極めて臆病で、人生は挫折の連続でした。私の場合、この臆病と挫折とが肥やしになったと思います。」と述べ、病気でさえも魂の成長のために自分の意思が引き寄せていると信じて、不屈の信念で経営を続けました。

松下幸之助の言葉を聞いた稲盛和夫は経営を見直し、その後の京セラは驚異的な成長を遂げることになります。

 

「それをなし遂げるために最も大切なことは、まずそのことを強く願うというか、心に期することだと思うのです。なんとしてもこれを成し遂げたい、成し遂げなければならないという強い思い、願いがあれば、事はもう半ばなったといってもいい。」

事を成し遂げるためには、松下幸之助の言葉を単なる精神論と考えるのではなく、実践することが必要だと思うのです。

 

言葉の力

力のある言葉と力のない言葉があります。

人に何かを伝え、人を動かす力がある言葉と、力のない言葉があります。

同じ内容を言っているのに、言葉が相手に伝わる人と伝わらない人がいます。

綺麗な言葉で流暢に話をする人もいれば、舌足らずで間の取り方も決して上手とはいえない話し方の人もいます。

しかし、綺麗でなくとも流暢でなくとも心に届く言葉があります。

何が違うのでしょうか。

 

いろんな要素があるのだと思うのですが、人に何かを伝えるためには、話す人が伝えたいことに関して、100%の揺らがない確信を持っていることが必要だと思うのです。

お金も物も人もない企業家の武器は、絶対に達成して成功してみせるという志しかありません。そんな何もない頃の企業家が成功するためには、協力してほしい周りの人に想いを伝えるしかありません。

お金も物も人もない企業家の志に揺らぎがあれば、誰もついて来ることはないでしょう。

 

また、どれだけ熱い想いで話をしたとしても、話をする相手の求めているコト、知識、経験に合わせなければ熱意も空回りするだけ。言葉は相手の器までしか伝わりません。

伝えるためには相手のために話すという姿勢が必要でしょう。相手のことに焦点を当てず、「うまく話したい」「よく思われたい」などと、自分自身のことを考えると緊張に繋がります。相手の願望に焦点を絞って、自分の経験をもとに飾らない等身大の自分を表現することが、聴き手の心を捉えるのだと思います。

 

社員の育成においても言葉は重要です。人を生かす言葉もあれば、人を殺す言葉もあります。社員の失敗に対して、怒りに任せて頭ごなしに、社員の自己概念が下がってしまうような辛辣な言葉を投げてしまうことは避けなければなりません。感謝と愛がなければ社員は育たないと思うのです。

仕事でも家庭でも恋愛でも、良好な人間関係を構築する際の言葉の伝え方は、同じではないでしょうか。

 

人の本質は変わりません。ひょっとすると人を動かすものは言葉ではなく、「命をかけてでも伝えたいことがある」という強く熱い想いなのかもしれません。

 

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