保険会社が示す逸失利益は低い?確認すべき3点を八代の弁護士が解説
2026/09/09 08:24|カテゴリー:交通事故
こんにちは。弁護士法人Si-Lawです。
交通事故のけがが治りきらず後遺障害が残ったとき、保険会社から示談金の提示を受けて「逸失利益がこんなに少ないのか」と驚かれる方は少なくありません。逸失利益は示談金の中でも金額が大きくなりやすい項目で、計算の前提が一つ変わるだけで数百万円単位の差が生じることもあります。今回は、保険会社が示した逸失利益が低いのではないかと感じたときに、確認していただきたい3つの点を八代の弁護士が解説します。

逸失利益とは「事故がなければ得られたはずの将来の収入」
逸失利益とは、交通事故で後遺障害が残ったり、亡くなられたりしたことで、将来得られるはずだった収入が失われた分の損害をいいます。治療費や入通院慰謝料が「すでに起きた損害」であるのに対し、逸失利益は「これから先の損害」を今の時点で見積もって請求するものです。
後遺障害の逸失利益は、おおまかにいえば「基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」で計算します。ライプニッツ係数とは、将来受け取るはずのお金を前倒しでまとめて受け取るため、その分の利息を差し引く(中間利息を控除する)ための数値です。この3つの要素のどこを低く見積もられているかを確認することが、金額を検討する出発点になります。

確認すべき1点目:基礎収入が実態に合っているか
基礎収入は、原則として事故前年の収入をもとにします。会社員の方であれば源泉徴収票の支払金額が基準になりますが、注意が必要なのは次のような場合です。
まず、事故の前年にたまたま休職や転職があって収入が下がっていた方です。前年の数字だけを機械的に当てはめると実態より低くなるため、複数年の平均や事故直前の月収から算定すべきだと主張していくことになります。次に、自営業や個人事業主の方です。確定申告の所得金額をそのまま使われることが多いのですが、事業を続けるために支出せざるを得ない固定費(家賃や減価償却費など)は、働けなくても出ていく費用として基礎収入に加算すべき場合があります。
また、専業主婦(主夫)の方は「収入がないから逸失利益もない」と説明されることがありますが、家事労働にも経済的な価値が認められており、賃金センサスの女性平均賃金をもとに算定するのが実務の考え方です。学生や若い方についても、平均賃金を用いて算定することがあります。
確認すべき2点目:後遺障害等級と労働能力喪失率
労働能力喪失率は、認定された後遺障害等級に応じて目安が定められています。たとえば14級であれば5%、12級であれば14%が目安です。等級が一つ違うだけで喪失率が大きく変わるため、そもそも認定された等級が症状の実態に合っているかを見直す必要があります。
非該当や想定より低い等級となった場合、異議申立てによって認定が変わることもあります。その際は、後遺障害診断書に自覚症状や検査結果が十分に記載されているか、通院の経過が途切れていないかといった点が重要になります。示談を成立させてしまうと後から争うことは難しくなりますので、等級に納得がいかない段階で示談書にサインしないことが大切です。
確認すべき3点目:労働能力喪失期間が短く区切られていないか
労働能力喪失期間は、原則として症状固定時から67歳までとされています。ところが保険会社の提示では、この期間が短く設定されていることがあります。典型例が、むちうち(頸椎捻挫)で14級9号が認定されたケースで、「5年程度」と区切られることが一般的です。12級13号でも10年程度に制限した提示がなされることがあります。
症状の内容や治療経過によっては、より長い期間を主張できる場合もありますので、提示書の内訳に何年分で計算されているかが書かれているかを必ず確認してください。内訳が示されていないときは、算定根拠の開示を求めることができます。
死亡事故の場合の考え方
亡くなられた場合の逸失利益は、就労可能年数までの収入を基礎に計算しますが、後遺障害の場合と違って「生活費控除」が行われます。ご本人が生きていれば支出したはずの生活費を差し引く考え方で、一家の支柱であれば30〜40%、女性であれば30%程度が目安とされています。扶養している家族が何人いるかによって割合の主張が変わるため、ここも争点になりやすい部分です。
なお、死亡事故では逸失利益のほかに死亡慰謝料や葬儀費用も損害となります。金額が大きくなるぶん、提示額の妥当性を判断するには裁判所が用いる基準との比較が欠かせません。
提示を受けたら、サインの前にご相談ください
保険会社の提示額は、自社の支払基準に沿って算定されたもので、裁判所が用いる基準(いわゆる弁護士基準)とは異なることがあります。弁護士が交渉に入ることで、基礎収入の取り方や喪失期間の設定を見直し、増額につながる場合があります。もっとも、事故の状況や過失割合、後遺障害の内容によって結論は変わりますので、まずは提示書と後遺障害診断書をお持ちいただき、内容を確認するところから始めるのが現実的です。
一度示談が成立すると、原則としてやり直しはできません。金額に疑問を感じた段階でご相談いただくことをおすすめします。
八代・熊本での相談実務
八代市内では国道3号線や南九州自動車道での事故のご相談が多く、通院先が限られる地域では、転院や通院間隔をめぐって保険会社と見解が分かれることがあります。訴訟になった場合は熊本地方裁判所八代支部が管轄となり、示談で終えるか訴訟に進むかで見込める賠償額が変わることもあります。当事務所は八代オフィスを拠点に、地元の医療機関への通院状況を踏まえてご相談を伺っています。
こんなときは弁護士へご相談ください
- 保険会社から提示された賠償額が妥当か分からない
- 治療がまだ必要なのに、保険会社から治療費の打ち切りを告げられた
ご相談の流れは、お電話またはフォームでのお申し込み → 日程調整 → 八代オフィスまたは熊本オフィスでの面談(オンライン相談も可)です。相談料は1時間11,000円(税込)、1時間を超える場合は30分ごとに5,500円(税込)です。受付時間は平日8:50〜17:30(土日祝休)です。
お電話でのご相談:八代オフィス 0965-62-8582(弁護士部門)/熊本オフィス 096-234-6543
お問い合わせフォームはこちら
本記事は一般的な法律情報の提供を目的としたものであり、個別の事情によって結論は異なります。記載内容は公開日時点の法令・実務運用に基づくもので、特定の結果を保証するものではありません。具体的な対応は弁護士にご相談ください。
執筆・監修:弁護士 西田幸広(弁護士法人Si-Law)
公開日:2026-09-09 / 最終更新日:2026-09-09

