介護した分は相続で多くもらえる?寄与分と特別受益の違いを八代の弁護士が解説
2026/10/01 09:06|カテゴリー:相続
こんにちは。弁護士法人Si-Lawです。
「母の介護を何年もしてきたのに、相続では兄弟と同じ取り分なのですか」「兄だけが生前に家の購入資金をもらっていたのですが、不公平ではないですか」。八代・熊本でも、こうしたご相談は少なくありません。この2つの悩みに対応するのが、寄与分と特別受益という制度です。名前が似ていますが、考え方は正反対です。

寄与分と特別受益の違いは「増やす側」か「引く側」か
一言でいうと、寄与分は亡くなった方の財産の維持・増加に貢献した相続人の取り分を増やす制度です。特別受益は、生前に特別な利益を受けた相続人の取り分から、その分を差し引く制度です。どちらも、相続人どうしの公平を図るために民法に定められています。

寄与分が認められるのはどんなとき
寄与分が認められる典型は、次のような場合です。
・家業(農業や商店など)を長年無給に近い形で手伝い、財産の維持や増加に貢献した
・亡くなった方の事業に資金を出した
・介護をしたことで、本来かかるはずだった介護費用(ヘルパー代や施設費用)の支出を免れさせた
ここで注意したいのは、「普通の親孝行」や「家族としての通常の世話」では足りないとされやすい点です。親族には、もともと互いに助け合う義務があるためです。寄与分として認められるには、「特別の寄与」といえる程度の貢献が必要で、一般に次のような点が見られます。
・無償性:対価(報酬や生活費の援助など)をほとんど受けていない
・継続性:数か月ではなく、相当の期間続けた
・専従性:仕事を辞める・減らすなど、かなりの負担を負って行った
・財産への影響:その結果、財産の維持・増加につながった
介護をした分はいくらもらえる?現実の難しさ
介護を理由に寄与分を主張する場合、よく使われる考え方は「介護報酬の目安額×介護した日数×裁量的割合」です。ただし、実際に認められる金額は、このような計算どおりにはならないことが多く、期待より低くなる傾向があります。特に、要介護度が低い期間や、同居していて食事の世話をする程度だった場合は、認められにくいのが実情です。
また、令和元年(2019年)の民法改正で、相続人以外の親族(たとえば長男の妻)が無償で介護などをした場合に、相続人に金銭を請求できる特別寄与料の制度が新設されました。「息子の嫁として介護したのに、相続人ではないから何ももらえない」という不公平を和らげる制度です。請求できる期間は、相続の開始と相続人を知った時から6か月、または相続開始から1年と短いので注意が必要です。
特別受益になるのはどんな贈与か
特別受益とされるのは、主に次のようなものです。
・遺言による贈与(遺贈)
・結婚や養子縁組のための贈与(持参金・支度金など)
・生計の資本としての贈与(自宅購入資金、事業資金、高額な学費など)
毎月の生活費の援助や、ふつうの範囲の学費・お祝い金は、通常は特別受益にあたらないと考えられます。「どこまでが特別か」は、親の資力や他の兄弟との均衡を踏まえて個別に判断されます。
特別受益がある場合は、その贈与額を遺産にいったん加えて(持ち戻して)相続分を計算し、受け取った相続人の取り分からその額を差し引きます。たとえば、遺産が3,000万円で、長男だけが生前に1,000万円の資金援助を受けていた場合、遺産を4,000万円とみなして計算し、長男の取り分からは1,000万円を引く、という考え方です。なお、結婚してから20年以上の夫婦間で自宅の贈与があった場合などは、持ち戻しを免除したものと推定される特例もあります。
どちらも「主張する側が証明する」のが原則
寄与分も特別受益も、主張する側が証拠で示す必要があります。口頭の「やってあげた」「もらっていた」だけでは、相手が認めない限り通りません。集めておきたい資料は次のとおりです。
【寄与分】介護日誌・メモ、要介護認定の通知、通院や施設の記録、介護にかかった費用の領収書、家業の帳簿や給与の有無が分かる資料
【特別受益】預貯金の通帳の出入金記録、不動産の購入資金の流れ、贈与契約書、振込記録
預貯金の取引履歴は、金融機関に請求すれば過去10年分ほどを取り寄せられることが多いため、早めに集めると良いでしょう。
話し合いがまとまらないときの進め方
まずは相続人どうしで遺産分割協議を行い、寄与分や特別受益を考慮した分け方を話し合います。まとまらなければ、家庭裁判所の遺産分割調停を申し立てます。調停では、調停委員が双方の主張と証拠を聞きながら、現実的な着地点を探ります。それでも合意できなければ審判に進み、裁判官が判断します。寄与分は、遺産分割の調停・審判の中で併せて主張していく形が一般的です。
注意したいのは、時間が経つほど証拠が失われ、記憶もあいまいになる点です。また、特別受益には「相続開始から10年を過ぎると、原則として主張できなくなる」という期間制限が、法改正により設けられています(令和5年4月施行。寄与分も同様)。気になる点があるなら、早めに整理することをおすすめします。
遺留分や遺言との関係
特別受益は、遺留分を計算するときにも関わってきます。生前贈与が多額だと、他の相続人の遺留分を侵害することがあるためです。詳しくは遺留分侵害額請求の時効と進め方の記事をご覧ください。また、「介護してくれた子に多く渡したい」という場合は、寄与分に頼るのではなく、遺言で意思を明確にしておくのが最も確実です。遺言の種類については自筆証書遺言と公正証書遺言の違いの記事で解説しています。
よくある質問
Q. 同居して母の世話をしていただけでも寄与分は認められますか?
A. 通常の家族としての世話にとどまる場合は、認められにくいです。介護の内容・期間・負担の大きさ、費用を免れさせた事情などを具体的に整理することが大切です。
Q. 兄が生前に多額の援助を受けていたのに、遺産分割で考慮されないことはありますか?
A. 被相続人が遺言などで「持ち戻しをしない」意思を示していた場合や、援助が通常の範囲内と評価される場合は、考慮されないことがあります。
Q. 寄与分と特別受益の両方が問題になることはありますか?
A. あります。「長男は生前に資金をもらい、次女は介護を続けた」というケースでは、両方を踏まえて計算します。
八代・熊本での相談実務
遺産分割の話し合いがまとまらない場合、八代市・氷川町・芦北町などにお住まいの方は熊本家庭裁判所八代支部(八代市西松江城町)が調停の管轄になります。調停は月1回程度のペースで期日が入り、解決までに半年から1年以上かかることも珍しくありません。農地や自社株、空き家となった実家が遺産に含まれるケースは八代地域では特に多く、評価や分け方をめぐって争いが長期化しやすい点に注意が必要です。当事務所は八代オフィスを拠点に、必要に応じて連携する税理士・司法書士とともに対応しています。
こんなときは弁護士へご相談ください
- 相続人の間で話がまとまらず、遺産分割協議が止まっている
- 遺言書が出てきたが、内容に納得できない・有効なのか分からない
ご相談の流れは、お電話またはフォームでのお申し込み → 日程調整 → 八代オフィスまたは熊本オフィスでの面談(オンライン相談も可)です。相談料は1時間11,000円(税込)、1時間を超える場合は30分ごとに5,500円(税込)です。受付時間は平日8:50〜17:30(土日祝休)です。
遺産分割・遺言・家族信託については、専門サイト「この街の相続」でもくわしく解説しています。
お電話でのご相談:八代オフィス 0965-62-8582(弁護士部門)/熊本オフィス 096-234-6543
お問い合わせフォームはこちら
本記事は一般的な法律情報の提供を目的としたものであり、個別の事情によって結論は異なります。記載内容は公開日時点の法令・実務運用に基づくもので、特定の結果を保証するものではありません。具体的な対応は弁護士にご相談ください。
執筆・監修:弁護士 西田幸広(弁護士法人Si-Law)
公開日:2026-10-01 / 最終更新日:2026-10-01

